Perdeberg Winesという名前は、パール地区にあるPerdeberg山に因んでつけられました。Perdebergとは、オランダ語で「馬の山」を意味します。
山の斜面に見える陰影の縞模様が、まるでシマウマのように見えるため、オランダ人が、誤って「馬の山」と名付けたと言われています。(シマウマは馬というより、ロバに近い種類です)
パーデバーグ・ワインズは、1941年年に設立されました。それ以前からPerdebergの栽培家たちは高品質なブドウを育てていましたが、当時南アフリカワインとして、その地域に期待されていたことは品質ではなく、より安い価格で提供する事でした。
そのような方針に不満を抱き、このPerdebergのブドウ栽培家だったJAN ROSSOUW氏は、栽培家たちが納得のゆく高品質なワインを自分たち自身で生み出すことを、周囲の農家たちに持ちかけました。こうしてパーデバーグ・ワインズが誕生しました。
※当時、南アフリカのワインは、KWVという協同組合が舵取りを行っていました。KWVとは、1918年にワイン産業の安定を求めブドウ栽培農家によって設立された協同組合で、「南アフリカブドウ栽培協同組合」を意味する“Ko-operatieve Wijnbouwers Vereniging Van Zuid-Afrika Beperkt”の頭文字の一部を取ったものです。KWVは政府と密に連携を取りながら、国をあげての産業として、ワイン生産と輸出増進へ取り組んでいました。
1956年に、JOSEPH HUSKISSON氏が初めてフルタイム勤務をする醸造家として参画し、これがパーデバーグ・ワインズの第二の転換点となりました。彼はワインの品質を第一に考える、という方針に忠実に従い、様々な改革を行いました。例えば、ヨーロッパから最先端の醸造技術を輸入したことや、南アフリカで二番目に低温発酵用の温度管理設備を整えたセラーを建造したことは、ワイナリーにとって大きな功績でした。
1990年には栽培方面の改革に乗り出しました。こちらにもフルタイムで従事する栽培専門のスタッフを採用するようになりました。ブドウ畑の環境が急速に改善され、ブドウの品質は瞬く間に向上しました。
設立時の写真。品質にこだわる、Perdebergの栽培家数人が中心になって設立されました。
1956年から醸造家として働いたJOSEPH HUSKISSON氏。
パーデバーグ・ワインズは、栽培家のプライドが詰まった、高品質のブドウから品質重視の姿勢でワインを造りますが、その際指標としている事は以下の点です。
【乾燥した南アフリカワインのクオリティを表現する】
個々の畑の特徴を大切にしながら、スモールバッチの醸造を行いテロワールの特徴を引き出す。また、乾燥した畑にも極力灌漑をせず、雨水による自然のままの栽培を目指す。
【サステナブル】
ブドウ畑は基本的に持続可能な農業、生態系保全を重視し、ブドウ畑だけではなく、周囲の環境も含めた運営を行う。
ブドウ栽培地としての南アフリカの特徴は、乾燥、海から吹く強い風です。収量重視であれば、灌漑設備を導入し、人工的に水分供給をしながら垣根仕立てをすることが最も効率的ですし、南アフリカだけではなく他の乾燥地帯でも一般的な方法です。
しかし、パーデバーグ・ワインズでは、昔から受け継がれてきたブッシュヴァインの畑を守り、灌漑を一切行わないことで、テロワールを鮮明に表現することを第一に考えています。17世紀からの歴史ある栽培方式、ブッシュヴァインならば灌漑に頼らない栽培が可能で、そればかりが格段に優れたブドウを収穫することができます。
ブッシュヴァインは、棚や垣根仕立てと異なり、ブドウ樹だけでまるで盆栽のように低く仕立てられた木の事。
ワイヤーを使わず、樹をそのまま地面に立てる方法で、雨が少ない土地では、樹の背丈が低い方が根から吸いあげた水分を樹全体に効率よく行き渡らせることができるため、よく採用さえています。また、南アフリカだけでなく、南フランスやスペインなど強風が頻繁に吹き付ける地域でも、強風に強いという特性のブッシュヴァインによる仕立てが広く採用されています。
一方、垣根仕立てと異なり、機械による収穫ができないため、人件費が余計にかかり、低価格ワインの生産には向かない、というデメリットがあります。
パーデバーグワインズの管理する畑の土壌はbokkeveld Shaleと呼ばれる頁岩と花崗岩の混じる土壌です。南アフリカの地質は5〜10億年前に形成された、地球上でもっとも古い土壌の一つと言われています。地殻変動による隆起や、降雨による浸食の結果、南アフリカ国内には様々な地形が形成されており、多様なミクロクリマが存在しています。
花崗岩質土壌は全体的に赤から黄色っぽい土壌で、ワインにミネラルを与えます。また、頁岩質は茶色っぽい土壌で、骨格のしっかりしたワインを生み出す特徴があります。灌漑を恒常的に行うと根が浅くはるため、これらの稀有な土壌成分の魅力を十二分に発揮できません。しかし、ブッシュヴァインの場合、水分を求め地中深くまで根が伸び、結果的に多くのミネラルをブドウ樹が集めることができるという利点があります。
品質にこだわる姿勢や、南アフリカの独自性を表現する様々なアプローチが評価され、パーデバーグ・ワインズは
Michelangelo International Wine & Spirits Award にて「Produce of the year」に選ばれ、名実共に南アフリカトップクラスの生産者としてその地位を確立しました。
※Michelangelo International Wine & Spirits Award とは、南アフリカの優れたワイナリーの発見と評価、発展を目指して、1997年に設立された賞です。世界から厳しいジャッジを下せる専門知識を有する審査員を招へいし、厳格な審査を行います。南アフリカで、今は無名でも情熱と優れた品質を備えたワイナリーが世に出るきっかけとなっています。